がんの痛みの治療についてこのページを印刷する - がんの痛みの治療について

がんの痛みとは

痛みは我慢しなくてはならない症状ではありません

初診のがん患者の約1/4、治療中~治療後の患者の約1/2、進行期がん患者の約3/4にがん疼痛が認められます。
患者さんやご家族は、「がんの痛みは我慢しなければならない。」「治療中は痛くても仕方ない」と考える方も多いようです。しかし痛みを我慢することで食欲がなくなる・眠れなくなるなど日常生活に支障が出たり、気持ちのつらさや意欲の低下につながり、治療に影響が及ぶこともあります。
WHOのガイドラインにおいても、がん疼痛マネジメントはがん治療の一部として統合されるべきであるとされており、抗がん治療とがん疼痛緩和のための治療は同時に行うべきものと考えられています。

痛みは患者さん自身にしかわかりません。ご自分の言葉で痛みを伝えることが大切です。痛みを我慢するのではなく、日常生活に支障がないように適切な治療を受けましょう。

がんの患者さんが体験する痛みの原因

1. がんの進行に伴う痛み = がん疼痛

浸潤、転移

3種類の痛み
①がんが内臓にある場合の痛み(内臓痛)
②骨、筋肉、皮膚など体の構造部分にある場合の痛み(体性痛)
③痛みを伝える神経に障害を起こした場合の痛み(神経障害性疼痛)

2. がん治療に関連した痛み
術後痛、化学療法・放射線治療による末梢神経障害、皮膚障害、口腔粘膜障害など

3. がんの進行に関連する痛み
筋攣縮、リンパ浮腫、便秘、褥瘡、廃用症候群など

4. がんと無関係の痛み
片頭痛、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、リウマチ性疾患など

痛みの治療の目標

2018年に発表(改訂)されたWHOのガイドラインにおいて、
痛みの最適なマネジメントの目標は、許容できるレベルまで痛みを軽減し、生活の質(QOL)を維持できるようにすること
とされています。

がんによる痛みは可能な限り軽減されるべきものですが、全ての痛みを完全に取り除くことは難しいです。
痛みの治療の目標は、患者さんが許容できる生活の質(QOL)を確保できるレベルまで痛みを軽減することです。

一般的には以下のように目標を設定して段階的に治療を進めていきます。

第一目標:痛みに妨げられずに眠れる
第二目標:安静にしていれば痛まない
第三目標:身体を動かしても痛みが強くならない

緩和ケアチームのロゴマーク

痛みの治療法

薬物療法

がん疼痛緩和の基本は薬物療法です。
痛み止めの使用にあたっては
①飲み薬を用いる(必要に応じて貼付剤、注射、座薬なども使用)
②時間を決めて規則正しく使用する
③患者さんごとに治療法を選択する
痛みの種類、場所、強さなどに応じて、患者さんごとに最適な治療法を選択します。痛みと
治療の効果を評価しながら治療目標の達成を目指します。
薬剤の選択は、WHOの三段階除痛ラダーを用いることが一般的です。


④ ①~③を行ったうえで細かい配慮を行う
薬の説明や副作用への対応、生活に合わせた飲み方の工夫、そのときどきの痛みに合わせた
薬剤の調整などを行います。


薬物以外の治療

痛み止めの薬以外にも、痛みを和らげる治療が行われます。

⑴ 放射線療法
骨転移の痛みなどに対して、痛みを和らげることを目的とした放射線治療が行われます。
骨転移以外にも、腫瘍の局所浸潤、皮膚やリンパ節への転移、脳転移に伴う頭痛など、がん
病巣が存在することに伴う痛みは全て放射線治療の対象となる可能性があります。
治療は放射線科の放射線治療専門医が行います。
放射線治療について詳しく知りたい方は主治医にお知らせ下さい。
がん相談支援センター、緩和ケアチームも対応可能です。
→放射線治療について

⑵ 神経ブロック
神経ブロックとは、痛みを伝える神経に薬剤を作用させる、あるいは高周波で熱を加えるな
どにより神経の働きを止めることによって痛みを感じなくする方法です。
身体の限られた部分に強い痛みがある、痛み止めが効きにくい痛みがある、眠気などの副作
用のため痛み止めを増やすのが難しい などの場合に神経ブロックが有効な場合があります。
神経ブロックは整形外科、麻酔科、ペインクリニックなどで行われますが、当院にはペイン
クリニックはありませんので、岡山大学病院のペインセンターと連携しています。
→ペインセンター|岡山大学大学院医歯薬学総合研究科

神経ブロックに関するご相談、岡山大学病院との連携の詳細についてのお問い合わせは緩和
ケア内科、緩和ケアチーム、がん相談支援センターで対応しています。

痛みを和らげるケア

痛み止めを使うこと以外に、痛みを予防する方法や痛みを和らげる方法があります。痛みがどのようなときに強くなるのか、あるいは、何をすると和らぐのかを知っておくと生活の中に取り入れることができます。
生活を見直すこと、ご自分でできるセルフケアなども取り入れましょう。

⑴ 生活の見直し
痛みは以下のような様々な要因によって、良くも悪くもなります。
親しい人と話をすること、カウンセリングを受けることが効果的な場合もあります。

⑵ セルフケア
ご自分でできるケアをいくつか挙げますが、やって良いかどうかを医師や看護師に確認して下さい。

痛みを一人で抱え込まず、ご家族や医師、看護師、薬剤師などに相談して下さい。
当院ではがん診療に携わる全ての医師・歯科医師 及び 緩和ケアに従事する全ての医療従事者を対象とした緩和ケア研修会を開催するなど、がん診療に携わる全ての診療従事者により、全てのがん患者さんに対して必要な緩和ケアが提供できるように努めています。
緩和ケア研修会修了者名簿はこちら

専門的な緩和ケアを必要とする患者さんには緩和ケア内科、緩和ケアチームが主治医と連携して対応いたします。
→緩和ケアについて

参考文献

・WHOガイドライン 成人・青年における薬物療法・放射線治療によるがん疼痛マネジメント
 (金原出版株式会社)
・がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版(日本緩和医療学会/金原出版株式会社)
・新版 がん緩和ケアガイドブック(日本医師会/青海社)
・患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド(日本緩和医療学会/金原出版株式会社)
・緩和ケアレジデントマニュアル 第2版(医学書院)
・がん疼痛緩和の薬がわかる本 第3版(余宮きのみ/医学書院)