診療内容このページを印刷する - 診療内容

診療内容は、虚血性心疾患、不整脈、心不全、肺高血圧症、心臓リハビリテーションと成人循環器疾患治療をほぼ網羅しています。全ての分野に、専門医を有しており、高いレベルでの診療を行っています。市内最大級の病床を有する総合病院であり、循環器専門 病院では治療困難な併存疾患を有する難治性の患者様に対しても、各科の専門医と連携をとりながら安全で最適な治療が可能となっています。また、経験豊富な心臓血管外科チームとともに24時間での救急治療体制が確立されています。循環器病床は、CCU4床、Post CCU 20床、一般病床48床での運用となっています。

虚血性心疾患

心臓の血管(冠動脈)が狭くなる状態を狭心症、急に詰まってしまう状態を心筋梗塞と呼びます。急性心筋梗塞では急激な胸痛が生じ命に関わることがあります。狭心症では体を動かしたときに胸の締め付けるような痛みや重苦しさを感じることが多いですが、症状が明らかでないこともあります。症状がなくても冠動脈病変が隠れていることもありますので、糖尿病患者様・透析患者様など、動脈硬化リスクが高い方は是非一度当科にご相談ください。検査技術の進歩により外来での検査(心電図、心エコー、冠動脈CT、心筋シンチグラフィなど)でもかなりのことがわかるようになってきました。治療の中心は、カテーテル治療(PCI)ですが、どの様な病変・患者様について行うべきかについては、現在世界中で議論されているところです。私たちは、最新の研究結果と目の前の患者様の状態や生き方・お考えのどちらも尊重し、おひとりおひとりの人生にとって何がベストの選択か考えご提案するように心がけています。もちろんPCIが適応となる患者様に対しては、当院では以前より数多くのカテーテル治療(PCI)を行い、技術を磨いてきましたので、安全かつ有効な治療を提供できると自負しております。プレッシャーワイヤによる血流評価などを適宜行い、ロータブレータ、ダイヤモンドバックなどの各種機器も使用可能です。心筋梗塞の場合は1~2週間以上の入院期間が必要なことが多いですが、狭心症に対する検査・治療であれば、最短で1泊2日から2泊3日の入院で可能です。冠動脈バイパスグラフト術の方が良いと思われる患者様については、当院心臓血管外科と密に連携しています。また、脚の血管や頸・腎臓の血管等の狭窄が合併していることもありますので、少し歩いただけでも脚がだるくなる、薬を飲んでも血圧が下がらないなどの症状があればご相談ください。当科では心臓に限らず全身の血管を見るように心がけています。

心臓カテーテル治療(PCI)年別件数推移

不整脈・心不全

不整脈とは

心臓は1日約10万回、微量な電気が規則的に流れることで動いています。その電気刺激に乱れが生じることが不整脈で、不整脈により動悸やめまい、また心拍出量が減少することによる循環不全(心不全)をきたすことがあります。不整脈には、脈が速くなる頻脈性不整脈と脈が遅くなる徐脈性不整脈があり、それぞれの治療法は全く異なります。不整脈の種類によっては、命に関わる重篤な不整脈も存在し、早期に発見し、適切な加療が求められます。当院では、患者様の病態や希望に則したテーラーメイド治療を行っています。

1.頻脈性不整脈

頻脈性不整脈の原因は、電気刺激の一部が異常興奮する局所型(図1)と、異常な電気回路が形成され電気刺激が旋回する回路型(図2)、また、双方の特徴をもつ混合型に分かれます(図3)。

図1 局所型(triggered activity) 図2 回路型(reentry) 図3 混合型 (局所+回路型)

治療方法には、薬物治療と経皮的心筋焼灼術(カテーテルアブレーション:図4)がありますが、不整脈の種類や症状によって、治療方法を選択します。最近では医療技術の進歩に伴いアブレーション治療により根治できる不整脈も多くなってきています。当院では、より複雑な難治性不整脈治療にも対応するため、2種類の最先端の不整脈検知システム(3Dマッピングシステム)を用いて安全かつ確実な治療を行っています。近年、心房の電気興奮が乱れることにより生じる心房細動は、生活習慣病や年齢との関連が深く、急速に患者さんが増加しています。動悸、めまい、息切れの症状を認め、進行すると心不全をきたすようになります。また、心房の血流の低下により血栓という血の塊ができやすくなり、重篤な脳梗塞の原因にもなります。最近では、早期発見、早期治療を行うことで生命予後の改善を認めることが証明されており、当院でも多くの患者さんの治療を行っています(図5)。また、心室という部位に頻脈性不整脈を生じると、生命に関わる重篤な病態になります。この不整脈に対する治療は難治性のものが多く、治療は経験のある医師と施設に限られています。当院医師は、国内外で多くの重症の致死性心室性不整脈の経験を積んでおり、これらの疾患のアブレーション治療及びデバイス(植込み型除細動器)治療も積極的に行っています(図6)。

2.徐脈性不整脈

加齢等により心臓内の電気の流れが遅くなったり、途絶することで脈が遅くなることを徐脈性不整脈といいます。徐脈により、めまい、失神症状や心不全をきたすと心臓外から電気刺激をおくる電極を挿入する手術(ペースメーカー植込み術)が必要になります。手術自体は侵襲も少なく、体への負担はあまりありませんが、手術後の遠隔期に創部感染や新たな不整脈の発生や機械のトラブルをきたすことがあります。当院では、インターネットを介した遠隔モニタリングシステムを積極的に用いて、ペースメーカーの遠隔期トラブルを早期に発見するようにしています(図7)。

心不全とは

心不全とは、『なんらかの心機能障害、すなわち、心臓に器質的および、あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償的機転が破綻した結果、呼吸困難、倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群』と定義されています。厚生労働省の人口動態統計によると、平成30年の死因順位別は、第1位が悪性腫瘍、第2位は心疾患で、中でも単一臓器では心不全が最も高い死亡率となっています。心不全の症例数は20年間で2倍以上に急増しており、今後の高齢化社会の到来により、医療崩壊をきたす『心不全パンデミック』を生じることが危惧され、国としての対策が急務とされています。心不全は、以前は色々な疾患の終末期の病態と考えられていました。近年、診断及び治療技術の急速な進歩により、原因によっては早期診断、治療を行うことで治る心不全も存在するようになっています。

1.薬物治療

心不全治療の基本は、現代も薬物治療が主体になります。近年、心不全に対する新規薬物が多く開発され、日本でも認可されています。しかし、薬物の選択には病態を理解することが最も大切であり、当院では総合病院の利点を生かし、各内科分野の専門医の知見や最先端の検査機器を駆使して、適切な心不全薬物治療を選択しています。

2.非薬物治療

心不全には原因疾患を治療することで改善する病態も多く存在します。原因として、1.心筋を栄養する血管が狭窄、閉塞する虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、2.心臓内の電気信号に異常をきたす不整脈、3.心筋自体に障害をきたす心臓弁膜症や心筋症、肺高血圧症による右心不全があります。岡山医療センターでは、心不全の原因疾患に対する治療が可能であり、『治る心不全』を目指して積極的に非薬物治療も行っています。

治療例:伝導障害を伴った心不全症例に対する治療法(両心室ペーシング治療)(図8)

肺高血圧治療

肺高血圧症とは肺動脈の血圧が異常に上昇する状態です。心臓や肺に原因があったり、肝臓に原因があったり、その要因は様々ですが、その中でも肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症はそれぞれ厚生労働省の指定難病となっており、専門的な治療を要する病態です。肺動脈性肺高血圧症に対しては、内服薬での治療や在宅酸素療法に加えプロスタグランジンI2持続静注療法(フローラン・トレプロスト)の導入・維持も積極的に行っており、欧米諸国と比較しても良好な治療成績を得ています。慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対しては、バルーン肺動脈血管形成術(BPA)や血栓内膜摘除術(PEA)を中心とした治療を行っており、日本全国あるいは世界各国から患者様のご紹介をいただいている他、世界各国の医療施設から治療の見学に来ていただいております。肺高血圧症は労作時の息切れや、疲れやすい、足がむくむ等の症状で発見されます。そのような症状でお困りの方は、ご相談ください。

心臓リハビリテーション

心疾患をお持ちの患者さんは心臓の働きが低下しています。そして、入院中安静な生活を送ることにより、さらに体力が低下します。また、今後の生活に対して不安が生じたり、病気が再発する危険性もあります。そこで、運動療法、食事療法、服薬や生活指導などを行います。

心臓リハビリテーションの対象疾患

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心臓手術後
  • 心不全
  • 大血管疾患(大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管手術後)
  • 末梢動脈閉塞疾患

運動療法の効果

  • 体力が向上するため、楽に動けるようになります。
  • 血管の機能が改善するため、血流がよくなります。
  • 動けるようになるため、不安やうつ症状が軽くなります。
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの動脈硬化の原因(危険因子)が改善します。
  • 病気の再発や死亡率が減ります。

運動療法の実際

  • 病棟やリハビリセンターにて開始します。リハビリテーション科医師、理学療法士、作業療法士が担当します。
  • 準備運動、歩行運動、自転車運動、筋力トレーニングなどを、個々の体力応じておこないます。
  • 退院に向け、階段昇降などの日常生活動作訓練、運動指導もおこないます。
  • 退院後、状況に応じて、外来にて運動療法を継続します。