胃がん - 外科(一般)このページを印刷する - 胃がん - 外科(一般)

胃の場所とはたらき

胃は消化管のひとつで、みぞおちあたりに存在します。口から摂取した食物が、食道を通って胃にたどりつき、消化に適した状態になってから腸へ送り出されます。胃の大きさは大人のこぶし3個分ほどで、入口(食道とつながっている部分)を噴門部、出口(十二指腸につながる部分)を幽門部、それ以外の部位を胃体部といいます。胃の主な働きは、食物の貯留(食事を貯めること)、撹拌(胃酸や粘液と混ぜ合わせること)、輸送(少しずつ腸に送り出す)です。

胃がんの病期(ステージ)

ステージ1:比較的早期の胃がんで周囲のリンパ節に転移がない状態です。
ステージ2:胃がんが大きくなっているが転移がない状態、または胃がんは小さくても周囲のリンパ節に転移がある状態です。
ステージ3:胃がんが大きくなって周囲のリンパ節に転移がある状態です。
ステージ4:周囲のリンパ節より離れた臓器に胃がんの転移がある状態です。

(日本胃癌学会編「胃癌取扱い規約(第15版)」(金原出版)より一部改変)

胃がんの治療

胃がんの治療には、内視鏡治療、外科手術、化学療法(抗がん剤)、緩和療法などの治療があります。治療は主に病期により決定されますが、同じ病期でも病気の進行具合、全身状態、心臓・肺の状態などによって治療が異なる場合があります。

日本胃癌学会「胃癌治療ガイドライン 2021年版」(金原出版)より一部改変

胃がんの手術について

一般的に、遠隔転移がなく内視鏡治療の適応とならない患者さんが胃切除術の適応となり、根治を目指した手術が行われます。胃のすべてを切除する胃全摘術の他に、胃の下側を切除する幽門側胃切除術、胃の下側を切除する噴門側胃切除術があります。出血や通過障害などの症状を有する患者さんには緩和的胃切除術や胃空腸バイパス術を行う場合があります。

当院での胃がん手術

当院での胃の悪性腫瘍に対する年間の手術症例数は50例程度です。手術症例の年齢分布では男女とも75-79歳が最多となっており、80歳以上での手術も珍しくありません。また、当院の特徴として、循環器科をはじめとして各診療科スタッフが充実しているため、冠動脈疾患既往や透析中など、高リスクの患者さんへの対応も可能なことが挙げられます。最近増加傾向の噴門部の胃がんを切除する噴門側胃切除術では逆流の少ない再建方法(観音開き法)を行い、術後の食生活がすこしでも楽になるように工夫しています。

腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術は創が小さいことによる術後の疼痛の軽減だけではなく、術中出血量の減少や術後の腸蠕動の早期回復、入院期間の短縮などのメリットが報告されており、早期がんに対しては多くの施設で導入されています。大きなモニターを見ながら手術を行うため、精細な手術が可能です。当院ではステージ1の胃がんに対して腹腔鏡下胃切除術を施行しています。

コンバージョン手術

ステージ4の胃がんでは抗がん剤治療が中心となりますが、治療によって遠隔転移が画像上消失するなどの効果を認める場合があります。こういった症例の頻度は少ないですが、集学的治療の一つとして、予後の改善を期待して、胃切除術が行われる場合があり、コンバージョン手術と呼ばれます。抗がん剤治療が著効した場合には消化器科と連携して手術の検討を行います。

GIST

GISTなどの胃粘膜下腫瘍に対しては腫瘍径5cm以下を目安に腹腔鏡下手術を行っています。術中に内視鏡で胃の切離ラインを決定する腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除という新しい手術法を導入しており、切除範囲の縮小や胃の機能温存に取り組んでいます。