<クリティカルパス>
医療者用と患者さん用の2種類のパスを作成しています。
医療者用のパスは、医療の質の向上、チーム医療の推進を目的とし、医師や看護師、薬剤師、栄養士など多職種がチームとして連携を図り、情報の共有をおこなっています。
患者さん用のパスは、医療者用のパスに対応したものでわかりやすい言葉を用いイラストを挿入し、患者さんが理解しやすいように工夫して作成しています。入院時に入院診療計画書としてお渡しています。
横軸を時間軸、縦軸を達成目標・介入項目・入院から退院までの日々の検査・治療内容が一覧できるスケジュール表になっています。標準的な入院期間、退院の基準、食事や入浴、安静期間など入院生活の詳細な内容を知ることができます。
<歴史>
クリティカルパスは、米国の産業界で1950年代に発展した工程管理技法の1つで、多数の工程を短時間で、また最小経費で効率よく行うために開発された分析手法です。1985年米国の看護師Karen Zanderさんが診断群別定額支払い方式(DRG/PPS)の対応策として医療界に導入、日本でも急性期包括払いの試行(DRG/PPS)が始まり、医療の質を落とさずに最大の効果を上げるための方法として用いられるようになりました。
<当院のパス>
当院では、約300種類のパスを作成しています。
定期的に開催しているクリパス委員会は、医師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床検査技師、理学療法士など多職種で構成されており、パスの定期的な見直しによる改定や新規パスの作成に取り組んでいます。
クリティカルパスは一言でいえば上記のように言えます。もともとは産業界で用いられた工程管理や工程短縮のためのコスト分析手法であったクリティカルパスが、DRG/PPSが導入された1980年代にアメリカで医療に応用されたのが始まりです。
1998年11月に日本でも医療費の急性期包括払いの試行(DRG/PPS)が始まり、当院も全国で10施設の試行病院の一つになりました。それに伴い、当院では1999年7月にクリティカルパス委員会を立ち上げクリティカルパスの推進に力を入れてきました。
委員会は医師、看護師の他に薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、管理栄養士、理学療法士、医事の各コメディカルの代表で構成され(図1)、副院長と看護部長がオブザーバーとなって、毎月1回様々な疾患のクリティカルパスを作り上げてきました。
パスはスタッフ用と患者さま用に分かれます。その具体例を示しますが、基本的には縦軸に医療行為を、横軸に時系列で入院日数を明示した表形式になります。このスケジュールから逸脱(バリアンスといいます)しないように、各医療スタッフが協力して努力することにより、患者さまに質の高い医療を提供することができるのです。
看護サイドから見ると、クリティカルパスを活用して、看護スタッフからも患者さまからも良い意見が聞かれています。看護のベテランも新人も、経験に関係なく均一な看護ができることはもちろん、治療経過や方針が明確に把握できます。その結果、指示確認に費やす時間が短縮され、患者さまにかかわる時間が増え、質の高い看護サービスにつながっています。
患者さまからも「いつ、何の検査があって、いつから起きることができるのかがわかりやすい」「この日に説明があるんか、女房に電話しとこう」「明日は検査でご飯がたべれんのじゃな、わかっとるで。毎日読んどる」などの声がきかれます。
パス用紙を何度も読み返して自分の治療経過を確認することができるのでわかりやすいとの評価を得ています。
入院から退院までのスケジュールを情報提供することで、患者さまも家族も安心して入院生活がおくれています。今後はさらに多数の疾患についてクリティカルパスを作成し、患者サービスに努めたいと考えています。