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糖尿病・内分泌内科では糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病領域全般だけでなく内分泌疾患まで幅広く診療しています。糖尿病、脂質異常症、高血圧症はいずれも心筋梗塞、脳梗塞、慢性腎臓病をはじめとした動脈硬化疾患を引き起こすリスクとなります。このような血管合併症を発症させる前に様々な観点からリスクを評価し、発症・進展を防止するために最新の医療機器や各種薬剤などを使用して治療にあたっています。また、日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)専門医による甲状腺疾患を中心とした診療も行っており、副甲状腺疾患や下垂体疾患などの比較的稀な疾患も含めて内分泌疾患全般にわたり対応が可能です。
当科では総合病院としての利点を活かして医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科医師、歯科衛生士、理学療法士など多くのスタッフが一体となって協力・連携し、患者さんのセルフケアをサポートする「チーム医療」に力を注いでいます。患者さんそれぞれに合わせた個別化医療を実践するために週に1回の多職種カンファレンスを実施し、各職種からの意見を踏まえた上で最善の治療を選択していきます。また、各種合併症に対しては循環器内科、脳神経内科、腎臓内科、眼科、歯科といった各専門医と緊密に連携しながら治療にあたっています。同時に、地域のかかりつけの先生方と協力して糖尿病診療を行う「地域医療連携」を推進して患者さんにメリットのある医療を提供しています。
糖尿病を中心とした生活習慣病の治療には、患者さんにとって身近な地域のかかりつけの先生方のきめ細やかな日々の経過観察が非常に重要となります。また、当院のような総合病院での定期的な合併症の検索も同様に重要と考えています。このため、当科では病診連携および地域の先生方への逆紹介を積極的に進め、当院とかかりつけ医の先生方との緊密な連携を通じた「切れ目のない診療」を心掛けています。ご紹介いただく際は、可能な限り地域連携室を介して予約をいただけますとスムーズな診察が可能ですが、状況によっては当日の依頼も可能です。糖尿病専門医が毎日外来診察を行っておりますので、いずれの曜日にご紹介いただいても構いません。内分泌疾患に関しましては地域連携室を介して水曜日・金曜日にご紹介いただくことをお願いしておりますが、急を要すると思われる症例につきましては適宜対応いたしますのでご相談ください。
待ち時間が大変長くなる可能性がありますので、可能な限り、かかりつけの先生を介しての予約受診が望ましいと考えます。当院かかりつけの患者さんで予約外受診を希望される際は、受診前に電話連絡を頂くことで診察対応がスムーズになります。新患の患者さんで受診を希望される際は、少しお待たせすることになりますが、ご了承ください。
診療内容は、糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病から内分泌疾患まで幅広く診療しています。市内最大級の病床を有する総合病院であり、内科、外科、眼科、歯科などの各科の専門医と連携をとりながら最適な治療が可能となっています。当科は一般病床12床で糖尿病教育入院や内分泌疾患の精査、治療を中心とした診療を行いつつ、各診療科に入院中の糖尿病患者さんの血糖管理をきめ細やかに行い、それぞれの治療がスムーズに進むように適切なサポートを行っています。
日本では「糖尿病を強く疑う者」(糖尿病患者さん)と「糖尿病の可能性が否定できない者」(糖尿病予備軍)がそれぞれ約1000万人ずつと推計され、合計すると約2000万人、つまり成人の6人に1人が糖尿病またはその予備軍と言われています(厚生労働省 2016年国民健康・栄養調査より)。また、世界保健機関(WHO)によると糖尿病そのものや、糖尿病と関連の深い「虚血性心疾患」「脳卒中」「認知症」「腎臓病」などが死因の上位に入っています。かなり進行するまでは糖尿病そのものに自覚症状がないことから、健診等で指摘を受けても医療機関を受診することなく、合併症が進行した状態で初めて受診するといったことも多くあります。このような合併症の発症・進展を防止し、糖尿病を持たない健康な人と同じ寿命の確保、健康な人と変わらない人生を送っていただくことが糖尿病治療の目標になります。
<教育入院>近年、多くの医療機関で短期間の入院が主流となっている中で、当院では2週間の糖尿病教育入院を継続しています(平均入院期間:約14日、年間約200名)。インスリン分泌能やインスリン感受性を詳細に検討し、患者さん個々の病態に応じた治療方針を検討します。また、神経障害、網膜症、腎症といった細小血管障害のみでなく、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化を基にした大血管障害も含めた糖尿病に伴う合併症の検索を行い、必要に応じて各専門科に相談しながら早期治療を開始します。その他、糖尿病の合併症として認知されてきた歯周病のチェックやオーラルケアの指導、また、認知症の確認なども入院中に積極的に行います。さらに、看護師、栄養士、薬剤師を中心として指導を行うとともに、糖尿病教室を通じて正しい知識や管理方法(セルフケア)を身に付けていただきます。
<糖尿病教室>2週間を1クールとして、充実した内容の糖尿病教室を行っています。入院中でない方や患者さんのご家族の方もどうぞご参加ください。参加ご希望の方は、内科外来看護師にお問い合わせ下さい。
月 | A | 糖尿病ってどんな病気? (医師) |
B | フットケアについて (看護師) |
水 | C | 合併症① 細小血管症 (医師) |
D | 糖尿病の食事療法について (栄養士) |
木 | E | 合併症② 大血管障害 (医師) |
F | 治療① 飲み薬 (薬剤師) |
月 | G | 運動療法(リハビリ科医師、理学療法士) | ||
水 | H | オーラルケアと歯周病 (歯科衛生士) |
I | 調理の工夫、外食・嗜好品 (栄養士) |
木 | J | 治療② インスリン (薬剤師) |
K | シックデイについて (看護師) |
近年、糖尿病の分野では先進的な技術が次々と導入され、めざましい進化を遂げています。現在、国内では様々な新しい治療薬が登場して治療の選択肢が広がっています。また、簡単な操作でインスリンを自動で注入可能なインスリンポンプも登場しています(図1)。多彩な治療法の中から最適な治療を選択するために注目されているのが血糖値の「見える化」です。従来は指先を針で刺し採血して血液のブドウ糖濃度を確認していましたが、血糖値の動きのごく一部しか把握できませんでした。持続血糖測定(CGM:Continuous Glucose Monitoring)では皮下のブドウ糖濃度を連続的に測定することで、これまで点でとらえていた血糖値を線として把握できます。CGM のうちリアルタイムに血糖値の変動を確認できるものには、インスリンポンプに連動するもの、血糖測定器やスマートフォンをセンサーにかざした時に数値を表示するもの(図2)などがあります。CGM により寝ている時間帯の血糖値や自覚症状の乏しい低血糖を把握できるようになりました(図3)。このように血糖値の変動を「見える化」することで低血糖予防や血糖コントロール改善が期待できます。当院でもこのようなインスリンポンプやCGMを積極的に導入して良好な血糖管理を目指しています。
(図1)当院は妊娠・出産から新生児にいたる高度で専門的な医療を提供できる施設として「総合周産期母子医療センター」の指定を受けており、主に県東部の周産期医療の中核病院としての役割を担っています。このため、妊娠糖尿病や糖尿病を合併した妊婦の診療に多く携わることになります。産科・婦人科と協力しながら妊娠中の厳格な血糖管理を行うことで安全な妊娠・分娩に向けたお手伝いをしています。また、妊娠糖尿病と診断された患者さんは将来的な糖尿病の発症リスクが高まることから、分娩後の耐糖能の確認なども行っています。
<他科入院中の血糖管理>上記のごとく糖尿病患者さんの数は非常に多く、他科入院中の患者さんのうち糖尿病を併存している患者さんの血糖管理を当科で積極的に行っています。外科系診療科では周術期の厳格な血糖管理を行うことで術後の合併症の発生を抑えられる可能性がありますし、また、内科系診療科では各種感染症や副腎皮質ステロイド薬を使用する際などに血糖管理に難渋する場合があり、その際に当科で介入することで主病態の改善に寄与できることがあります。
多くの糖尿病患者さんが脂質異常症を合併しています。当科ではコレステロール、中性脂肪などの脂質を単なる数値としてみるのみでなく、電気泳動法やアポ蛋白を測定・評価することでアポリポ蛋白あるいは脂肪酸分画の観点から脂質異常症の本質についても詳細に分析しています。その結果、心筋梗塞発症のリスクが非常に高い患者さんには循環器内科と連携して冠動脈CTや心臓カテーテル検査を実施し、冠動脈に有意狭窄を認める患者さんには心筋梗塞を発症する前から必要に応じて薬物、ステント治療などの介入を行うことで心疾患の発症・進展予防に努めています。
本態性を含めた高血圧患者さんに対して生活習慣の是正を中心とした食事指導を行い、降圧効果が不十分な患者さんに対しては病態に応じて薬物による治療介入を行い、必要に応じて携帯型自動血圧計(ABPM)で治療効果の判定も実施しています。また原発性アルドステロン症などの二次性高血圧症疾患の診断・治療にも力を注いでおり、糖代謝異常との関連も状況に応じて評価しています。
内分泌疾患の中で一番頻度が高い疾患群は甲状腺疾患です。血液検査・超音波検査(年間約290件)・シンチグラフィなどの各種検査を用い、バセドウ病・橋本病など甲状腺内科疾患の診断・治療にあたっています。甲状腺クリーゼの入院加療やバセドウ病に対するアイソトープ治療にも対応しています。腫瘍性疾患については外科と連携して診療にあたります。その他、副腎疾患(原発性アルドステロン症・褐色細胞腫など)・下垂体疾患(下垂体腺腫・下垂体機能低下症など)・副甲状腺疾患(副甲状腺腺腫・副甲状腺機能低下症など)の診療も行っており、必要に応じて入院して負荷試験などを行い、正確な診断および適切な治療方針を検討します。
2022年度は常勤医師5名(うち4名は日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、1名は日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医(内科)、1名は休職中)とレジデント1名、内科専攻医数名で、入院、外来での診療、指導にあたっています。入院患者は常勤医師とレジデント、専攻医での複数主治医制で診療しています。10人前後の糖尿病教育入院患者(年間200人程度)および50~70人/日(年間950~1000人程度)の他科入院中患者の血糖管理を行います。入院患者については週3回のカンファレンスで診断や治療方針を検討し、そのうち1回は多職種での検討を行い、入院前の課題の抽出やその改善策についても検討を行います。
内科専攻医(糖尿病・内分泌内科専攻)は当院の内科専攻医プログラムに準じた研修を行います。専攻医1年目は、半年間程度は糖尿病・内分泌内科以外の内科研修、残りの期間は糖尿病・内分泌内科の研修、2年目は全て連携病院での研修、3年目の1年間は当院糖尿病・内分泌内科での専門研修となります。当院の糖尿病・内分泌内科での研修では糖尿病や脂質異常症、内分泌疾患の病態の把握、血糖管理における基本的な薬物選択からインスリン導入、先進糖尿病治療の実際などを経験・習得することを目的としています。特に、1年目は詳細な問診や理学的所見のとり方、脂質異常症の病態把握、他科入院中の血糖管理の基本を学び、糖尿病教室で講義を実施することで患者教育にも携わっていただきます。また、甲状腺超音波検査も積極的に経験していただきます。3年目では当科入院、他科入院とも、主治医として基本的な治療方針を決定していただきます。また、内分泌疾患の入院症例や外来初診患者の治療も優先的に経験していただきます。
専攻医を終了している先生は、レジデントとしてさらにより詳細な病態の把握、きめ細やかな治療内容の検討、初期研修医への指導等を経験していただきます。
行事予定 | 曜日 | 時間 |
入院患者カンファレンス | 月・火曜日 | 15:00~16:00 |
多職種カンファレンス | 木曜日 | 15:00~16:00 |
抄読会 | 月曜日 | 15:00~16:00 |
脂質カンファレンス | 木曜日 | 16:00~16:30 |
糖尿病学会認定教育施設として豊富な症例を経験可能ですので、内科専攻医プログラムの期間中に糖尿病専門医を取得するために必要な症例の大部分を経験可能です。日本内分泌学会の認定教育施設ではありませんが、当院での内分泌研修を内分泌代謝科専門研修の一部とすることを希望される方は前もってご相談ください。
専攻医終了後の進路としては当院でのレジデント、大学院への進学、他院でのさらなる専門研修など様々です。
当院での内科専攻医(糖尿病・内分泌内科専攻)やレジデント研修についてのお問い合わせ(施設見学も含め)は糖尿病・内分泌内科医師 武田昌也(takeda.masaya.mn@mail.hosp.go.jp)までお願いします。