小児医療は、新生児から思春期までの内科系疾患・外科系疾患全てに対応する広大な診療分野です。より充実した医療を提供するため、当院では小児に関わる複数科の診療科・コメディカルが連携し合って診療に取り組んでいます。小児科では、地域の救急医療の中核病院の小児科として24時間・365日体制で小児の救急患者さんを受け入れており、また予防接種や乳幼児健診などを通じて子どもの健康管理・健康増進を図っています。一方で、広範囲で多岐にわたる小児医療分野に対応できるよう内分泌・代謝疾患、腎疾患、アレルギー疾患、血液疾患、神経疾患、心疾患など各分野のスペシャリストの小児科医を配置し、互いに連携しつつ高度かつ専門的な医療を提供しています。また、日本小児科学会の専門医研修施設として多くの研修医やレジデントを受け入れ、若い医師たちの卒後臨床教育にも力を注いでいます。
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入院患者総数 | 1265人 (平均在院日数は5.6日) |
外来患者数 | 1日平均 95.6人 |
救急外来受診患者数 | 年間7767人 (うち救急車での来院は472人) |
当小児科は地域の小児救急医療中核病院として24時間・365日の救急診療体制を敷いており、岡山市の二次応需輪番体制の3分の2を担当しています。また、実際には二次応需日に関係なく岡山市外も含め多くの救急患者さんの受け入れを行っています。新生児医療については新生児科が独立して診療体制を敷いており、専門診療が必要な外科疾患については小児外科が24時間対応しています。
2019年末からの新型コロナウイルス感染症は未曽有の難局でしたが、当院は岡山県の南東部の拠点病院として地域の子どもたちの健康を守るべく医師、看護師、コメディカルが一丸となって受け入れにあたりました。行政からの要請症例を中心に、数百名の小児入院患者さんの受け入れを行いました。
2025年度に小児難病診療センターが開設されます。小児慢性特定疾病や指定難病などで医療的ケアが必要な患者さん、成人診療科へのトランジションが必要な疾患、小児治験ネットワーク対象疾患などを対象とし、専門的知識や診療技術を有する相談窓口として啓発活動や円滑な診療サポートを行っていきます。また、センター化されることで今までよりもさらに複数の診療科に受診しやすくなり、多職種間の連携もスムーズになります。
低身長、糖尿病、甲状腺疾患、副腎疾患、先天代謝異常症などに対応しています。低身長から発見される虐待児や近年増加している小児の生活習慣病の治療、岡山県の新生児タンデムマススクリーニングで発見されるクレチン症、フェニールケトン尿症などの19疾患の精密検査とその後の治療を行っています。移行期医療の支援例として周産期センターと協力し内分泌・代謝疾患女性患者の妊娠・出産のフォローを行っています。また希少疾患・難病と言われている先天性代謝異常症のうちライソゾーム病(ファブリー病・ムコ多糖症・ゴーシェ病など)に対して酵素補充療法を行っています。
当院は、日本腎臓学会の研修施設に認定されています。小児領域では、学校検尿などの有所見者の精査フォローはもちろん、ネフローゼ症候群、急性・慢性腎炎、急性・慢性腎不全、遺伝性腎疾患、電解質異常、先天性腎尿路奇形、尿路感染症など、ほぼすべての小児腎関連疾患の診断治療管理を、小児外科、腎臓内科、臨床検査科とも密に連携しながら行っています。岡山県では数少ない、小児の腎生検や在宅腹膜透析管理を施行している施設であり、2020年から小児腎移植を再開した小児外科と協力しながら、小児腎不全診療も行っています。
当院小児科では小児血液がん学会専門医・日本血液学会専門医を中心に小児の血液腫瘍疾患の診療にあたっています。血液疾患では種々の貧血、免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性好中球減少症、血友病、フォンヴィレブラント病などの診断・治療を行っています。当院は国の「がん対策推進基本計画」に基づいて指定された小児がん連携病院であり、小児科と小児外科が連携して腫瘍性疾患(小児がん)の診療にも取り組んでいます。小児科では白血病、リンパ腫の診断・治療を行います。小児外科には小児がん認定外科医が在籍しており、豊富な経験を基に肝芽腫、神経芽腫、腎芽腫、胚細胞腫瘍、奇形腫などの固形腫瘍の手術を行っています。悪性腫瘍に対しては小児科で化学療法(抗がん剤治療)、放射線科で放射線治療を行います。難治性固形腫瘍に対する自家造血幹細胞移植の実績も有しています。小児血液腫瘍は難しい疾患ですが、小児がん中国・四国ネットワークへの参加、岡山大学病院小児科との定期カンファレンスを通じて、質の高い診療ができるように努めておます。
けいれん性疾患(熱性けいれん、てんかん)、中枢神経感染症(脳炎・脳症、髄膜炎)、脳性麻痺、先天性神経疾患(染色体/遺伝子異常、先天代謝異常症)、発達障害(自閉症、ADHD)などのお子さんの診療をしています。なかでも小児のけいれん性疾患は非常に多く、小児救急医療の代表的疾患でもあります。当科では年間1000件以上の脳波検査を行うなど小児神経専門医、てんかん専門医を中心に診療に励んでいます。
近年、コロナ禍の影響などで心のバランスを崩す児童が増加しています。当小児科では不登校外来で子どもの心の諸問題にも取り組んでいます。
当院小児科は日本小児科学会の専門医研修施設に指定されており、岡山大学病院を基幹施設とする小児科専攻医研修プログラムの研修連携施設(支援施設)として、常時専攻医を受け入れています。小児科および新生児科のローテート研修で小児科専門医試験受験に必要な症例経験がおおよそカバーされ、学会発表や論文投稿も積極的に行っています。小児外科のローテートも必須としており、小児外科疾患についても研鑽を積んでいただきます。分野によってはサブスペシャリティ専門医研修も可能です。入院患者さんの診断・治療方針について科内カンファレンスを週に3回行うほか、医長回診、他科との合同カンファレンス、英文論文抄読会、PALSシミュレーショントレーニング、レントゲンカンファレンスを定期的に行っており、診療能力の向上に励んでいます。
卒後教育だけでなく、岡山大学医学部の選択性臨床実習の一環として、新生児科、小児外科とも共同で毎年多数の学生さんを受け入れています。また、全国の医学部4-6年生を対象として学生セミナーを開催し、診療現場を体験してもらうことで小児医療の魅力を若い世代へ伝えています。
胎児から始まり、新生児期・小児期・思春期を経て、次世代を生み育てる成人期に至るというリプロダクションを連続的・包括的に支援する医療のことを成育医療といいます。小児科は成育医療推進研究室に所属しており、新生児科、産科、小児外科、コメディカルと協力しながら多方面にわたる分野の臨床研究および治験等に携わっています。
救急医療と研究活動の両立は困難ではありますが、メンバーそれぞれが専門性を生かし、各自年1回以上の学会発表と論文発表を努力目標として取り組んでいます。
1990年にユニセフ(国際連合児童基金)は、子どもたちが様々な搾取から保護され、ひとりの人間として大人と同じように尊重される社会を実現するために「子どもの権利条約」を発効しました。この条約は(1)子どもたちが差別を受けないこと、(2)子どもたちにとって最善が尽くされること、(3)子どもたちが生命を守られて成長できること、(4)子どもたちが意見や人格を尊重されること、という原則に基づいて作られています。
子どもの権利が尊重された医療を提供するために、私たちは2012年に「こどもの権利憲章」を制定して実践しています。
子どもたちが少しでも快適に病院で過ごしたり病院に通ったりできるように療養環境を改善していくことは、小児医療に携わる者の務めと考えています。子供たちの恐怖心を少しでもやわらげるため、看護師・保育士はかわいいスクラブやエプロンを着用して子どもたちに接し、入院生活においても季節感を感じてもらえるよう壁や窓の模様替えを行ったりお楽しみ会を企画したりするなど工夫を凝らして子どもたちに笑顔を届けてくれます。また、長期入院の患者さんや学童で勉強したい患者さんのために病棟に個室ブースを設置するなど、入院中の子どもの学習環境の充実にも取り組んでいます。
小児系マスコットキャラクターのさにーちゃんも活躍中です。2022年には、新型コロナウイルスの難しい時期に少しでも患者さんが憩える場を提供したいとの思いから「さにーちゃんガーデン」が開園されました。春から秋にかけては木々に花が咲き、冬には夜間にイルミネーションが施され、安らぎの場を提供してくれます。
小児科医はつねに、子どもたちの幸せな将来を見据えて診療を行っています。健康を守り病気を治すことはもちろんですが、子どもたちが心豊かな生活を送るための諸問題すべてに対応する総合的な診療科でもあります。子どもに関することは、いつでもどんなことでもご相談ください。