当院は岡山市内・岡山県北部の診療の中心を担う病院であり、泌尿器科では年間に5,000人を超える入院患者の診療を行い、500件以上の手術を施行しています。
現在は常勤医5名と非常勤医3名が在籍しており、うち6名は 日本泌尿器科学会 の認定をうけた泌尿器科学会専門医です。
泌尿器科疾患は悪性腫瘍(がん)、尿路結石、感染症、排尿障害、男性不妊と様々な分野にわたっています。当科では、一般的な泌尿器科診療、最新のがん治療や男性不妊に対する手術、腎移植医療も行っていることが特徴です。
がん治療では、日々新たな薬剤が次々と登場しています。最新の知見に基づき、治療効果と副作用をしっかりとお話した上で、それぞれの患者さんに合った治療をご提案します。
また、がんゲノムを利用した個別化医療への期待が高まっている中、当院もがんゲノム医療連携病院として遺伝子医療を行っています。遺伝診療科による遺伝カウンセリングも可能です。
男性の不妊の原因として知られている精索静脈瘤に対する手術も積極的に行っております。「診療内容」の項で詳しくお話しています。
また当院では腎移植医療も行っており、移植用腎採取術(ドナー腎摘除術)を泌尿器科が担当しています。腎移植外科と協力して、中国・四国地方における拠点施設として腎移植医療の一翼を担っています
当科では診療の質を維持するために、常にかかりつけ医との連携を強化し続けることを目指しています。当院に御紹介を頂く際は、地域連携を介して予約を頂くとスムーズになりますが、緊急性があるとご判断いただいた場合には当日の依頼も可能です。
また、当科は前立腺がん地域連携パスの基幹病院を担っております。地域連携パスの活用で、かかりつけ医との情報交換・共有が円滑になるとともに、患者さんの通院時間の短縮とかかりつけ医の手厚い診療による不安の解消といった利点にもつながります。地域連携の推進についてのご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。
当院へ受診の際は、可能な限りかかりつけの先生を介して予約をいただいてから受診をいただく方が望ましいです。当院にもともとかかりつけの患者さんで、予約外の受診を希望される際は、受診前に電話での連絡を頂くことで診察対応がスムーズになります。
患者さんひとりひとりに丁寧な診察を行っていますので、予約の時間通りに診察を行うことができず、少しお待たせすることもあるかもしれませんが、ご理解くださいますようお願いします。
泌尿器科疾患は多岐に渡ります。おしっこの通り道である「尿路」と精子に関連する「精路」はすべて泌尿器科の領域となります。
「尿路」には腎臓、尿管、膀胱、前立腺、尿道、陰茎などが含まれ、「精路」には精巣、精巣上体、精管、精のうなどが含まれます。腎臓の上にある副腎という臓器も泌尿器科の領域になります。
それらの部位に発生する腫瘍、結石、感染症や、尿に関する悩み(排尿障害)、性機能障害、男性不妊といった様々な分野を診療しています。
次に、泌尿器科の診療の代表的な疾患をいくつかご紹介します。
当院は地域がん診療連携拠点病院として質の高いがん医療を提供します。
泌尿器がんについては当院のがん診療HPを御覧ください。
また、当院の久住倫宏医師が泌尿器がんの解説をおこなった動画もぜひ御覧ください。
[youtube動画]
腎臓で作られた尿中に含まれているカルシウムや尿酸などの成分が固まったものが尿路結石です。位置によって腎結石、尿管結石、膀胱結石などに分類されます。
尿路結石は脇腹から下腹部にかけて激しい痛み、血尿、吐き気を引き起こします。結石によって尿の流れが障害される(うっ滞といいます)ためです。尿のうっ滞に重ねて細菌感染を起こすと、腎盂腎炎という高熱を伴う感染症を発症することもあり、緊急対応が必要となります。
腎盂腎炎が起きていなければ、自然に結石が出るのを待つこともありますが、痛みが強い場合や自然な排出が難しい場合には内視鏡による手術により治療します。
ご高齢の方であれば、おしっこに関する悩みは肩こり以上にありふれたものです。
しかし、おしっこの悩みは人に相談しにくく、病院への受診をされない方もたくさんいらっしゃいます。
排尿障害は、膀胱に尿を貯め、排泄するというサイクルに異常をきたす状態です。
排尿障害の原因となる代表的な疾患について簡単に解説します。
●過活動膀胱
膀胱の「尿が溜まった」ことを感じるセンサーが敏感になりすぎ、急に尿意をもよおし我慢ができない症状(切迫性)が出現する疾患です。内服薬と生活指導が治療の2本の柱になります。薬のみでは改善しない場合にはボツリヌス毒素を膀胱に注入するという新しい治療があります。
しかし、おしっこの悩みは人に相談しにくく、病院への受診をされない方もたくさんいらっしゃいます。
排尿障害は、膀胱に尿を貯め、排泄するというサイクルに異常をきたす状態です。
排尿障害の原因となる代表的な疾患について簡単に解説します。
●前立腺肥大症
膀胱の出口にある前立腺が大きくなる事で、尿道を圧迫し排尿障害をおこします。
本来、前立腺は栗ぐらいの大きさですが、肥大によりミカンほどの大きさになります。前立腺肥大症によるおしっこの症状がある場合にはまずお薬での治療を行いますが、症状が強い場合には手術で治療することもあります。
[過去のトピック TUEBを参照]
●神経因性膀胱 (低活動膀胱)
膀胱がうまく縮むことができず排尿ができない状態です。糖尿病、脳や脊髄の病気、骨盤内の手術等で排尿に関わる神経がうまく働くことができず起こります。お薬での治療の効果は、残念ながら高いとはいえず、自分で全く尿を出すことができずに自己導尿(カテーテルを入れて尿を出す治療)が必要になることもあります。
おしっこの悩みの原因は、説明したものの他にも多くあり、きちんとその原因を見極めた上で治療を受ける事が大切です。例えば、水の飲みすぎによって排尿回数が多い場合には、生活の上で飲水量に気をつけるだけで悩みがよくなり、お薬の治療は必要ない患者さまもおられます。
当院では、生活の上で気をつけることをお話すること(生活指導)をしっかりと行った上で、お薬の治療や手術によりおしっこの悩みを解決する方法を提案します。
精巣から心臓へ帰る血液が内精静脈と呼ばれる静脈内で逆流することで発症します。思春期で発見される場合には、陰嚢部の痛みやしこりで気付かれます。20~30歳代には不妊をきっかけに発見されます。放置しても生命に危険が及ぶことはありませんが、不妊症の男性側の要因のうち、3割は精索静脈瘤によるといわれています。
精索静脈瘤は手術によって、痛みとしこりの改善や、精液の質の回復が期待できます。当院では2015年より顕微鏡下手術を本格的に導入し、20年からはオーブアイ(Olympus社)という4K・3Dの高精細デジタルカメラシステムを用いて、これまで以上に繊細に手術を行っています。
手術の傷は鼠径(そけい)部に2~3センチ、手術時間は60~90分程度です。痛みが主訴の方には除神経術も併用して手術をおこなっています。術後翌日には創を確認して退院としています。
当院の市川孝治医師が書いたコラムもご参照ください
[コラム]
腎移植は腎臓の機能の低下により透析が必要な状態、あるいは透析の一歩手前の状態(末期腎不全)に対して、新たな腎臓を体内に移植することで、腎臓の機能を回復させる治療です。腎移植によって、透析の離脱、心身の機能の向上、食欲の増進、倦怠感や貧血の改善等が期待できます。一方で、免疫抑制剤を忘れずに内服することが必須となります。
当院の腎臓移植外科は1988年からスタートし、2020年末までに400件以上の腎移植手術を行っています。
当科では生体腎移植においてドナー(腎臓を提供される患者さま)からの移植腎採取を担当しています。通常の腎臓の摘出よりも高い技術と安全性が求められる手術です。
移植腎は腎移植外科によりレシピエント(腎臓を受け取る患者さま)の体内に移植されます。
[岡山医療センター腎移植外科]副統括診療部長 | |
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非常勤医師 | |
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多くの泌尿器疾患の診断の精度の向上と治療の質を保ちつつ、さらに発展させていくためには、治療行為とそれによって生ずる結果の因果関係や、患者さんの背景や治療法の選択がどのように影響するかを常に調査し続ける必要があります。
当院では、下記の臨床研究を実施しております。
お問い合わせがありましたら、以下の「問い合わせ先」へご照会ください。
①泌尿器疾患における患者背景因子と治療の効果、安全性、予後、病理学的特性等の関連を調査する過去起点コホート研究
[PDF]②前立腺癌に対するハイドロゲル併用定位放射線療法の観察研究
[PDF]